今回紹介する作品は、映画「パーフェクト・デイズ」です。
デジタル機器に囲まれた生活が当たり前になった今、本作で描かれる暮らしぶりはとても新鮮でした。
役所広司さん演じる平山は、ネットも使わず淡々とトイレ清掃員として働きながら、アナログな毎日を積み重ねています。
決して派手さはないけれど、その質素な生活ぶりから「小さなことを丁寧に続ける力」の大切さを教えてくれる作品です。
この記事では、本作のテーマや見どころ、役所広司さんの演技、印象に残った部分をネタバレ考察していきます。
映画「パーフェクト・デイズ」が描くテーマ
映画「パーフェクト・デイズ」は、日常の中にある”完璧な瞬間”の尊さを描いた作品です。
平山の生活はとてもシンプルです。
毎朝同じ時間に目覚め、決まったルートで職場へ向かい、公共トイレを清掃します。
昼休みには木漏れ日を見上げ、夜は好きな音楽をカセットで聴き、本を読んで眠りにつく。
まるでルーティンの繰り返しのように見えますが、その一つひとつを丁寧に続ける力が、彼の暮らしを豊かにしています。
例えば、木漏れ日を見上げるワンシーン。
都会の喧騒に埋もれがちな“自然の美しさ”を、丁寧に味わい続けています。
便利さや効率を求める現代社会と対照的に、平山の生活は「小さなことを丁寧に続ける力」が人生を豊かにすることを示しています。
映画「パーフェクト・デイズ」のあらすじ

東京都内でトイレ清掃員として働く平山。彼の一日は、早朝の車通勤~トイレ掃除から始まる。食事も簡素で、余暇には音楽や読書を楽しむだけ。
しかしそんな生活の中に、思いがけない人との出会いや過去の記憶が少しずつ顔を覗かせる。
姪のニコとの再会をきっかけに、彼の背負ってきた人生の断片が垣間見えるが、それでも彼は静かに一日一日を積み重ねていく。
大きな事件は起こらないものの、彼の日常は登場人物の心をじんわりと揺さぶる。
映画「パーフェクト・デイズ」の概要と主なキャスト

映画「パーフェクト・デイズ」は2023年に日本・ドイツ合作で制作された作品です。
上映時間は124分で、ジャンルはヒューマンドラマとなっています。
主なキャストとして、以下が挙げられています。
- 役所広司(平山役)…本作の主人公。トイレ清掃員として丁寧に仕事に励む。アナログ・ミニマムな生活を送っている。
- 柄本時生(タカシ役)…平山の部下。アルバイト感覚で清掃員として働く。
- 中野有紗(ニコ役)…平山の姪。平山との再会に心がときめく。
- アオイヤマダ(アヤ役)…タカシの友人。タカシからアプローチされるが頑なに拒む。
- 麻生祐未(ケイコ役)…平山の妹。
- 石川さゆり(ママ役)…平山行きつけのスナックのママ。歌が上手。
- 三浦友和(友山役)…ママの元夫。
本作は、第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、役所広司さんが日本人俳優としては、19年ぶり2人目となる男優賞を受賞しました。
また2024年の第96回アカデミー賞で、日本代表作品として国際長編映画賞にノミネート。
監督は、名作「パリ、テキサス」を手掛けたヴィム・ヴェンダースによって描かれています。
以下のリンクで、映画「パリ、テキサス」のレビュー記事を書いているので参考にしてみてください。
映画「パーフェクト・デイズ」のネタバレ考察
平山の生活は、“不完全さを抱えながらも完璧な日々を生きる”ことの象徴です。
彼の暮らしには、孤独や過去の影が確かに存在しています。
姪との再会は、家族や過去に背を向けてきた人生を示唆しています。
また、同僚や知人とのやりとりからも、彼が社会的に「成功」とは言えない立場にいることが理解できるでしょう。
それでも平山は穏やかに、日常を受け入れて生きています。
特に印象的なのがラストシーン。
車を運転する彼の目から溢れる涙は、過去の喪失・孤独の深さを物語っています。
彼は何故泣いていたのでしょうか?
実は「ニコ=実の娘」説が、映画を観た人の間でけっこう語られている考察のひとつです。
例えば
- 姪への感情の強さ…平山がニコに見せる態度は、叔父というより「父親」に見えるシーンが多いです。彼女を見守る姿勢は「血のつながり」の濃さを思わせます。
- 元妻らしき人物との抱擁…終盤に出てくるケイコとの再会シーン。抱擁の仕方や漂う空気感に「過去に夫婦だった関係」と考えても違和感がありません。
- 過去を多く語らない構造…ヴェンダース監督はあえて説明を省き、余白を残しています。平山がニコから「おじさん」と呼ばれていますが、母親ケイコが過去を隠している表れからかもしれません。
つまりラストの涙は、ただの孤独ではなく「過去の家族を思いながら生きる決意」とも解釈できます。
このように、映画「パーフェクト・デイズ」で描かれているのは、決して“完璧な人生”ではありません。
不完全さの中でこそ、一日の中にある小さな完璧を見出すことが本作の核心といえます。
映画「パーフェクト・デイズ」を観た感想(ネタバレ)
役所広司さんの演技が、映画「パーフェクト・デイズ」を特別な作品なものにしています。
セリフは極端に少ないのに、仕草や表情だけで語る役所さんの演技は圧巻でした。
特に印象的だったのは、トイレ清掃員として働く平山の姿です。
多くの人が敬遠しがちな仕事であり、私にはどうしても「不憫だな」と感じてしまう場面がありました。
ただ丁寧さ・誇りを持って働く平山の姿からは、そのような暗い雰囲気はほとんど感じられません。
清掃後に見せる静かな表情からは、むしろ「誠実に役割を果たす清々しさ」が感じ取れます。
また、以下のシーンが印象的です。
- 木漏れ日を見上げるシーン
- カセットで音楽を聴く姿…レドンドビーチ(パティ・スミス)など
- お気に入りの小説を読む…木(幸田 文)、11の物語(パトリシア・スミス)
アナログな日々の中で、小さな楽しみを丁寧に続けることが、彼の暮らしを支えている。
その積み重ねが「不憫さ」を「静かな誇り」に変えているようにも受け取れます。
映画「パーフェクト・デイズ」考察まとめ

映画「パーフェクト・デイズ」は、現代を生きる私たちに「本当の豊かさとは何か」を問いかける作品です。
デジタル機器の便利さに囲まれながらも、どこか満たされない時代に、平山の質素で静かな暮らしが逆に輝いて見える。
木漏れ日の下でご飯を食べ、好きな音楽をカセットで聴き、本を読んで一日を丁寧に終える。
こうした小さな習慣の中に、人生を豊かにするヒントがあることを本作は教えてくれます。
派手な演出はないですが、ついつい何度も観てしまう。そんな余韻を与えてくれる作品でした。
役所広司さんの味のある演技とヴィム・ヴェンダース監督の映像美が調和した、まさに“完璧な一日”を描いた映画と言えるでしょう。
日々の生活を見直したいと思っている方は、是非一度観てみてください。




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