今回紹介する作品は、映画『ティファニーで朝食を』です。
最近、YouTubeで知名度の高い心療内科医が「空虚感」について語る中で、本作を引き合いに出していたためです。
本作は、オードリー・ヘップバーンの傑作の1つであり、アカデミー賞を4部門受賞しました。
オードリーによる自由奔放ながらも、どこか空虚感に苛まれている様子が印象的な作品です。
今回は、映画「ティファニーで朝食を」のラストシーンを踏まえて、なぜホリーは最終的に愛を選んだのかについて考察していきます。
映画「ティファニーで朝食を」のあらすじ

美しく自由気ままに生きる女性ホリーは、ニューヨークのアパートに住んでいた。
ホリーは、いつかティファニー*で朝食をとれるような身分になることを夢見ていた。
ただアパートの上階に住んでいるユニオシは、何かにつけて難癖を付けてくる。ホリーはヒステリックなユニオシを適当にあしらっていた。
ある日、アパートにポールという作家の青年が引っ越してきた。
ポールはホリーと知り合うが、彼女のあまりにも自由奔放な暮らしぶりに驚き興味を持つ。
彼女の方も、ポールに兄の姿を重ね合わせ、親しみを感じていた。
ホリーの部屋には必要なモノしか無く、一緒に暮らしている猫には名前すらなかった。
当初ポールには、デザイナーの女性2Eという愛人がいた。しかし彼は、ホリーと過ごすうちに友達以上のような親密関係になってゆく。
ホリーは、ポールと友達以上の関係を持ちながらも、南米の大富豪ホセと結婚する予定になっていた。
*ティファニーとはニューヨークにある高級宝飾店のこと。
映画「ティファニーで朝食を」の概要と主なキャスト

映画「ティファニーで朝食を」は、1961年にアメリカで制作された映画で、上映時間は115分。ジャンルはコメディ・ラブロマンスとなっています。
主なキャストとして、以下が挙げられています。
- オードリー・ヘップバーン(ホリー・ゴライトリー役)…高級娼婦。天真爛漫な女性で多くの男性を翻弄しながら、自由気ままに暮らしている。
- ポール・バージャク(ジョージ・ペパード役)…ホリーの住むアパートに引っ越してきた駆け出し作家の青年。
- ミッキー・ルーニー(ユニオシ役)…ホリーの住むアパートの住人。日系アメリカ人のカメラマン。
- パトリシア・ニール(2E役)…ポールのパトロンであるデザイナーの女性。ポールとは愛人関係でもある。
- オランジー(猫役)…ホリーが飼っているペット。
原作は、カポーティの同名中編小説となっています。
小説では映画の結末と異なっており、オードリー・ヘップバーン演じるホリーが自由を求めてブラジルに旅立ちます。
そのため、原作と映画のメッセージ性の違いを比較してみるのも面白い視点です。
映画「ティファニーで朝食を」を観た感想(ネタバレ)

ここから、映画「ティファニーで朝食を」の感想(ネタバレ)を書いていきます。
本作では、当時清純派として名高いオードリー・ヘップバーンが高級娼婦ホリーを演じています。
ホリーはお金持ちの男性とデートする際、化粧室に行くたびに男性から50ドルを貰っていました。
今風に言うと「パパ活女子」といった感じでしょうか?
ホリーの自由奔放ぶりが垣間見えるエピソードです。
ただ内心ホリーは、「昔の貧乏な生活に戻りたくない」という強烈な不安感があったのでしょう。彼女は、お金の価値に重きを置いていました。
男性をお金目当てで物色する様子は観ていて、けっして気分の良いものではありません。
ただその一方、金銭面の不安は、昨今の不景気な時代にも通じる感情です。
そのような目線で観ると、ホリーの言動は一見傲慢ながらも、共感し得る存在として映し出されていました。
映画「ティファニーで朝食を」のラストシーンをネタバレ考察

ここから、映画「ティファニーで朝食を」のラストシーンをネタバレ考察していきます。
お金に執着していたホリーは、心のどこかにポッカリと穴が開いたような感覚、空虚な気持ちも併せ持っていました。
彼女は、お金だけでなく愛にも飢えていたからです。
例えば彼女は、大富豪ホセとの婚約解消の不運に見舞われていました。
しかし彼女は「お金・自由」などの刹那的な欲求に、最後まで目がくらんでいたように見えます。
婚約のために用意しておいたチケットを使って、ブラジルに一人旅をしようとしていたからです。
ホリーは、飼っていた猫のオランジーをさっさと見捨てることにしました。その後ポールから、以下のように言われます。
「君には勇気がない。人が生きてることを認めない。愛さえも…人のものになりあう事だけが幸福への道だ。
君だけは自由な気でいても、生きるのが恐ろしいのだ。自分で作った檻の中に入っている。
その檻はテキサスでも南米でもついて回る。自分からは逃れられないからだ。」
出典:映画「ティファニーで朝食を」
つまりホリーは、自分で作った檻の中で現実逃避をしていました。しかし彼女は、ポールのセリフで「愛」の価値・尊さに気づかされます。
早速彼女は、見捨てたオランジーを捜し出し、最後にはポールと恋仲になりました。
ラストシーンでホリーは、一人でいる自由を手放し、ポールとの愛を選択したのです。
彼女の選択は賢明だったように思います。
自己欺瞞的な行動を取るホリーの行動を、ポールは全て見透かしていたからです。
良き理解者ポールと仲直りしたことで、ホリーは穏やかな自我にやっと戻れたのではないでしょうか。
映画「ティファニーで朝食を」考察まとめ|「自由という檻」からの解放と愛の価値

映画「ティファニーで朝食を」では、ホリーの心境の変化が丁寧に描かれています。
序盤から終盤まで、彼女は一貫してお金や自由に重きを置いています。ただラストで彼女は、愛の存在価値について改めて思い知らされるのです。
ポールによる鋭い指摘、「自由という檻」の中で縮こまって生きる彼女の姿は、不幸そのものの象徴でした。
しかし、ポールとの愛に目覚めることで、ホリーは「自由という檻」から解放されます。
生き物に対する愛情を取り戻したホリーを通じて、本作では「愛すべきものの必要性・愛の存在価値」が暗に描かれているように感じました。
人はお金があっても幸せになれるとは限らない…そんなメッセージが込められているような作品でした。現代にも通じる普遍的なテーマですね。
ホリーを演じたオードリー・ヘップバーンの名演技にも注目です。
特に、彼女による「ムーン・リバー」のギターによる弾き語りが印象的です。この場面は、絵になるシーンとして世界中で有名になっています。
彼女のかすれたボーカルが、本作に華を添えていました。
ちなみに「ムーン・リバー」は、映画「ティファニーで朝食を」のサントラ盤で聴くことができます。
「ムーンリバー」の歌詞の意味について気になる方は、以下の記事を参考にしてみてください。
映画「ティファニーの朝食を」は、言わずと知れた名作なので是非一度観てみましょう。




コメント