今回紹介する作品は、映画「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」です。
本作は、ダウン症の青年ザックと、過去に傷を抱えた男タイラーの交流を描いた異色のロードムービーです。
単なる友情物語にとどまらず、夢を追うことの大切さや社会の枠にとらわれない生き方を描いた本作。
この記事では、そんな「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」のあらすじや深掘り考察をしていきます。
映画「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」のあらすじ
養護施設で暮らす22歳の青年ザックは、ダウン症*を抱えており、家族からも見放されていた。
しかし彼には、「プロレスラーになる」という夢があり、ある日施設を脱走。
彼の目標は、あこがれのプロレスラー「ソルトウォーター・レッドネック」のレスリングスクールに入門することだった。
一方、もう一人の主人公タイラーは、兄の死をきっかけに密漁などで生計を立てていた。
しかし仲間とトラブルを起こし、漁師たちから追われる身になる。
そんな中、彼は偶然にもザックと出会い、彼の旅に同行することに。
タイラーは最初は面倒そうにしながらも、次第にザックの純粋さやひたむきな夢に心を動かされていく。
二人は、時に笑いあい、時に衝突しながらも、お互いにとってかけがえのない存在となる。
ザックを心配する看護師のエレノアは、彼を連れ戻すための旅に出る。
しかしタイラーとザックの間に芽生えた友情や、プロレスラーの夢をかなえようとする姿を目の当たりにし、考えを変えていく。
果たしてザックは、憧れのレスリングスクールにたどり着くことができるのか。
そしてタイラーが向き合う傷ついた過去とは?
*ダウン症とは、21番目の染色体が3本あることで引き起こされる染色体異常症のこと。知的障害や身体的異常がみられる先天性の疾患。
映画「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」の概要と主なキャスト
映画「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」は2019年にアメリカで公開された作品で、上映時間は97分。ジャンルはロードムービー・ドラマとなっています。
主なキャストとして、以下が挙げられています。
- ザック・ゴッサーゲン(ザック役)…実際にダウン症を持つ俳優であり、彼の演技が物語にリアリティを与えている。
- シャイア・ブリーフ(タイラー役)…漁師。問題を抱えたアウトローながら、ザックと関わることで変化していく。
- ダコタ・ジョンソン(エレノア役)…ザックの世話をしている養護施設の看護師。
- ジョン・ホークス(ダンカン役)…タイラーを追う漁師。
- ジョン・バーンサル(マーク役)…タイラーの兄。故人。
- トーマス・ヘイデン・チャーチ(ソルトウォーター・レッドネック役)…ザック憧れのプロレスラー。物語のクライマックスで重要な役割を果たす。
本作は批評家から絶賛されています。
映画批評集積サイト「Rotten Tomatoes」では、批評家支持率が95%と高い評価を得ています。
キャスト達の素晴らしい演技が功を奏したようです。
映画「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」のネタバレ考察
ここからは、映画「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」のネタバレ考察をしていきます。
本作は単なる感動ロードムービーではなく、「社会の枠組みから外れた人々の生き方」を描いた作品でもあります。
①自由を得るための旅
ザックは「養護施設」という管理された環境から脱走し、タイラーは「過去のトラウマ」から逃れるように旅を続けます。
2人が向かう先は、単なる物理的な目的地(フロリダ)だけではなく、それぞれが自分らしく生きられる場所でした。
②タイラーの心境の変化
当初タイラーは、ザックを厄介者として扱っていました。
しかしザックの純粋な夢に触れることで、次第に「守るべき存在」として受け入れていきます。
例えば
- 川で溺れかけたザックを助ける
- 大型船にひかれそうになったザックを救う
- プロレスラーのリングネームやコスチュームを提案する
このように、タイラーとザックは友達以上の関係に変わっていきます。
③社会が決める「できる・できない」への挑戦
ザックの「プロレスラーになりたい」という夢は、周囲からは非現実的だと見なされていました。
ダウン症で体格にも恵まれていなかったためです。
ただ本作は、その常識を覆し「本人の意思・行動力さえあれば、夢は叶えられる」ことを示唆しています。
映画「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」ラストシーンのネタバレ考察
ここから、映画「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」のラストシーンについて考察していきます。
タイラーが生還したのか気になる所です。
①ラストシーンの状況整理
クライマックスで、タイラーは対立していた漁師ダンカンに襲われ、頭部を激しく殴打されています。
その後、ザックとエレノアが車でフロリダへ向かう場面が映し出されます。
後部座席にはタイラーが横たわっていますが、意識があるのかははっきりと描かれていません。
②タイラーは生還したのか?
果たしてタイラーは生還したのでしょうか?
タイラーは負傷したものの、ザックとエレノアとともにフロリダに向かっています。
もしタイラーが亡くなっている場合、ザックとエレノアはもっと悲壮感を帯びた表情をしているはずですが、彼らは明るい雰囲気でした。
そのため、タイラーは回復しつつあり、新たな人生をザックと歩もうとしている可能性が高いと言えるでしょう。
また監督のタイラー・ニルソンとマイケル・シュワルツは、本作を通して「希望」や「新たな人生のスタート」を描こうとしていました。
このような要素から、タイラーは生還した可能性が高いと考えられます。
映画「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」を観た感想
本作は、ロードムービーの持つ旅情とともに、人生の本質をさりげなく問いかける作品でした。
ザックを演じたザック・ゴッサーゲンによるナチュラルな演技、シャイア・ラブーフの不器用ながらも優しさを感じさせる演技が素晴らしかったです。
また、ダコタ・ジョンソンが演じた看護師エレノアの心境の変化も見どころの一つです。
さらに、南部の川沿いを進む旅の映像美が印象的で、どこか「スタンド・バイ・ミー」を想起させるような懐かしい雰囲気を感じました。
何より社会の枠にとらわれず、夢を追うことの大切さが伝わってくる作品でした。
映画「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」考察まとめ
映画「ザ・ピーナッツ・バター・ファルコン」は、人生の壁にぶつかっている人にこそ観てほしい作品だと感じました。
この作品を観ることで、自身の生き方が変わる可能性があるからです。
例えば
- ザックとタイラーの旅を通して、「自由とは何か?」を考えさせられる
- 夢をあきらめないことの大切さを描いている
- 既存の価値観にとらわれない大胆な発想
ロードムービーの魅力と感動が詰まった傑作、是非手に取ってみてください。
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