映画『Swallow/スワロウ』は異食症になった女性の葛藤を描いた

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今回紹介する作品は、映画「Swallow/スワロ」です。

誰もが羨む幸せを手にしたはずの女性が、ひょんなことから異物を食べ始めるというサスペンス映画です。

ビー玉、押しピン、釘、砂、電池…ありとあらゆる異物を食べることで、自らの欲求を満たす奇異な行動。

妊婦だったこともあり、危険極まりない行為でしたが、彼女なりの深い苦悩がありました。

この記事では、映画「Swallow/スワロウ」を観た感想や考察をしていきたいと思います。

『Swallow/スワロウ』衝撃の予告編

映画「Swallow/スワロウ」のあらすじ

大企業の御曹司リッチーと結婚したハンターは、ニューヨーク郊外の豪邸に暮らしていた。

誰もが羨む裕福な生活だったが、ハンターは閉塞感に苛まれていた。

ある日ハンターの妊娠が分かり、リッチーと義父母は喜んだ。しかしハンターは素直に喜べなかった。

あくる日ハンターは、小物入れにあったビー玉を飲み込みたくて仕方ない衝動に駆られ、口に入れた。その後、排泄物とともに出てきたビー玉を洗って元の場所に並べた。

次に彼女は押しピンを飲み込んでしまった。激痛を伴うも、不思議と満足感に満ち溢れていた。

その時からハンターは、異物を飲み込む快感に囚われてしまった。

映画「Swallow/スワロウ」の概要と主なキャスト

映画「Swallow/スワロウ」は2019年にアメリカで制作された作品で、上映時間は95分。ジャンルはホラー・ドラマとなっています。

主なキャストとして、以下が挙げられています。

  • ハンター・コンラッド(演:ヘイリー・ベネット)…裕福な家庭に嫁いだものの、抑圧された環境の中で異物を飲み込む「異食症」を発症する。
  • リッチー・コンラッド(演:オースティン・ストウェル)…裕福な家庭の御曹司で、ハンターに対して支配的な態度を取る。
  • キャサリン・コンラッド(演:エリザベス・マーヴェル)…リッチーの母。ハンターに対して冷淡で厳しい態度を取る。
  • マイケル・コンラッド(演:デヴィット・ラッシュ)…リッチーの父。
  • ウィリアム(演:デニス・オヘア)…ハンターの過去と関係のある重要人物。彼女の人生に大きな影響を与える。

この映画は、女性の自己決定と抑圧からの解放をテーマにした作品で、ヘイリー・ベネットの演技が高く評価されています。

映画「Swallow/スワロウ」でハンターが中絶した理由を考察

映画「Swallow/スワロウ」では、ラストシーンでハンターが妊娠中の赤ん坊を意図的に中絶しました。

2つ考えられる理由を挙げてみます。

①ハンターの人生は抑圧されていた

ハンターは裕福な家庭に嫁いだため、表面的には恵まれた生活を送っているように見えます。

しかし実際は、義理の家族や夫にコントロールされており、自由を奪われた状態です。

妊娠も「自分の意思」ではなく、家族にとっての当然の役割として求められており、彼女にとっては苦痛でした。

そのストレスから逃れるため、「異物を飲み込む」という異食症*を発症します。

心の奥にある抑圧や不安、自己コントロールを取り戻したいという無意識の欲求を満たすためです。

*異食症とは通常食べることのないものを日常的に食べる摂食障害(摂食症)の一つです。
食べるものには紙や石鹸や、毛髪、氷などさまざまなものがあり、1ヶ月位以上継続して摂取し続けた場合などが診断の基準となっています。

LITALICO発達ナビ」より引用

②ハンターにとって妊娠はさらなる束縛だった

ハンターにとって妊娠は、「新たな命を宿す喜び」ではないように感じられます。

逆に、夫や家族の期待に縛られ、自身の人生がさらにコントロールされる象徴的な出来事です。

そのため、ハンターにとって妊娠は、さらなる束縛以外の何物でもありませんでした。

上記の理由から、ハンターは妊娠中の赤ん坊を中絶したと考えられます。

映画「Swallow/スワロウ」を観た感想

映画「Swallow/スワロウ」は、ハンターの自分自身を取り戻していく過程がリアルに描かれていると感じました。

映画の終盤、ハンターは家から脱走して、実の父親ウィリアムと対峙します。

そこで彼女は、過去のトラウマ(母親がレイプされた結果、生まれた自分)と向き合うのです。

ハンター「私はあなたと同じ?」という問いに「君は私とは違う。君は何もしていない。君は悪くない。」と答えるウィリアム。

話し合いの末、ハンターは「自分は加害者の娘だから、誰かの都合で人生を決められるもの」ではないという結論に達したと思われます。

結果、彼女は自分の意思で赤ん坊を中絶します。単に「妊娠を終わらせる行為」としてではなく、「自身の人生を取り戻すための決断」でした。

これまで他人の期待に応えるだけの人生を送ってきたハンターが、初めて自分の人生について、自分で選択する瞬間だったと言えるでしょう。

映画「Swallow/スワロウ」は異食症をリアルに描いた作品

映画「Swallow/スワロウ」は、異食症をリアルに描いた作品と言えます。

異食症は単なる奇行ではなく、精神的な問題や抑圧の症状として現れることがあるためです。

ハンターによる

  1. ビー玉
  2. 押しピンやクリップ
  3. クギや電池
  4. マットレスの中身

これらを飲み込む心理的葛藤は痛々しいものがあります。

ただ、ハンターの異食行動は「自分の意思で選ぶ」という象徴的行為です。飲んだ後の恍惚感が如実にそれを反映しています。

しかし物語の終盤で、彼女は異食ではない行動(人工中絶)で自分の人生を選び取ることになります。

映画「Swallow/スワロウ」は、異食症というテーマを通じて、社会の中で求められる女性像に疑問を投げかける作品です。

作品を観終わった後、深く考えさせられること間違いないでしょう。

これを機に是非、ご覧になってください。

薬による妊娠中絶を考えている方は、以下の本を参考にしてみてください。

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