今回紹介する作品は、映画「タイピスト!」です。
1950年代フランスを舞台に、不器用な田舎娘が驚異的なタイピング能力を見出され、世界チャンピオンを目指すサクセスストーリーです。
本作は実話を基にした心温まる成長物語として、多くの観客の心を掴んでいます。
またレトロなファッション、丁寧に描かれた人物関係、そして主人公の成長への情熱が印象的な作品です。
この記事では、映画「タイピスト!」のあらすじから魅力まで詳しく考察していきます。
映画「タイピスト!」のあらすじ
舞台は1958~59年のフランス北西部。
田舎で父が営む雑貨店で働くローズ・パンフィルは、地元の縁談を持ちかけられていた。ローズは田舎を離れようと、リジューでルイ・エシャールが経営する保険代理店の秘書の採用面接を受ける。
採用されたローズは、新米秘書としてタイピングの才能を見いだされ、タイプライター早打ち大会に向けて猛特訓を積む。
大会の際には、他の応募者とは一線を画す花柄のワンピース姿で現れ、彼女独特な個性を際立たせる。
ローズは秘書としての通常業務では失敗を重ねるが、彼女の隠された才能である「タイピングの早打ち」を保険会社の経営者ルイが発見。
ルイは彼女の並外れた能力に着目し、世界タイピング選手権大会への出場を提案する。
二人は厳しい特訓を開始し、ローズはフランス国内大会を制し、世界大会へと駒を進めて行く。
映画「タイピスト!」の概要と主なキャスト

映画「タイピスト!」は、2012年にフランスで制作された作品です。上映時間は111分で、ジャンルは「ロマンティックコメディ・スポーツ映画」となっています。
主なキャストとして、以下が挙げられています。
- デボラ・フランソワ(ローズ・パシフィル役)…主人公の田舎娘。憧れの秘書業に就くが、ドジばかり踏んでしまう。しかし、ルイからタイピングの早打ちの才能を見いだされ、特訓することになる。
- ロマン・デュリス(ルイ・エシャール役)…保険会社の経営者で、ローズのコーチを務める。彼女のタイピングの才能を伸ばそうと厳しく指導する。
- ベレニス・ベジョ(マリー・テイラー役)…ルイの元愛人。
- ミュウ=ミュウ(マドレーヌ・エシャール役)…ローズの人生に影響を与える。
本作は、1950年代に実在したタイプライター競技会にインスパイアされており、”実話ベースのフィクション”に仕上がっています。
新人監督と実力派キャストの組み合わせが、本作の高い完成度を支えているため、フランス映画界からも高く評価されています。
映画「タイピスト!」を観た感想
映画「タイピスト!」を観て印象的だったのが、単なるラブコメディではないという点です。
田舎育ちの娘が、タイピングというたった一つの才能を見いだされて、猛特訓を積む様子はとても新鮮でした。
例えば以下のようなシーンが印象的でした。
- 2本指での高速タイピングを10本指タイピングに矯正させている
- タイピングの特訓なのに走り込みの練習をしている
- タイピング大会なのに観客が異常に盛り上がっている
このように、恋愛要素だけでなく「タイピング版ロッキー」のようなスポーツ映画としての面白さも兼ね備えています。
ヒロインの成長過程と恋愛要素のバランスが絶妙にマッチしており、最後まで飽きることなく観られる作品です。
映画「タイピスト!」の魅力とは?
映画「タイピスト!」の最大の魅力は、隠れた才能の発見・開花を通じて、人生の可能性への希望を与えている点です。
本作が長く支持されているのは、普遍的なテーマ(キャリア、恋愛など)を独創的な設定で表現していることで、観る人に勇気や感動を与えています。
例えば以下が挙げられます。
- 才能発見の喜び…誰もが持つ隠れた才能へのあこがれを、タイピングという身近な技術を通して表現している。
- 成長過程への共感…タイピング技術の向上だけでなく、内面的な成長も丁寧に描かれている。
- 時代を超えた普遍性…1950年代という設定ながら、田舎の閉鎖的な環境から世界へ羽ばたく過程は、時代を超えた普遍的テーマ(夢や自由)が込められている。
- 恋愛要素の絶妙なバランス…師弟関係から恋愛関係への感情の変化も、本作の魅力となっている。
- 視覚的完成度…自然、音楽、ファッションが1950年代のフランスが持つ美的センスで統一されている。
特に視覚的完成度という点においては、フランス映画「シェルブールの雨傘」と相通じるものがあります。
このように本作は、多面的な魅力が重なりあうことで、観客の心に深く刻まれる映画となっています。
映画「タイピスト!」のネタバレ考察

映画「タイピスト!」は表面的な成功物語というより、人間の成長や愛、自己実現の価値について考えさせられる作品です。
本作の結末と展開を分析すると、単なるサクセスストーリーを超えたメッセージが込められているように感じます。
①師弟関係の変化の意味
当初ルイとローズは、指導者と生徒という師弟関係でした。
ただ共に過ごす時間と彼女の成長を見守る中で、ルイの感情は徐々に恋愛感情へと変貌。
ルイの感情の変化は、人間関係の複雑さを表現しており、単純なサクセスストーリーを超えた深みを作品に与えています。
②1950年代女性像の現代的解釈
ローズのキャラクターは、1950年代の伝統的な女性像から脱却しています。
自分の才能を活かして世界で活躍しようとする現代的な女性を表現しているからです。
これは当時としては革新的な考え方であり、現代女性にも通じる普遍的なテーマです。
③実話に基づいた設定
「タイピスト!」は、実話をもとにしているという設定の為、映画の出来事がより現実味を帯びて感じられます。
結果として観る人に勇気や希望を与える効果があります。
1950年代に「タイピングの世界一を決める大会」が存在していたというのは驚きの事実です。
ただ実話ベースなので、物語のリアリティは感じます。
④タイピングの役割
タイピングという行為は、単なる技術だけではなく、集中力、継続力、情熱を象徴する手段として使われています。
ローズの指の動きが生み出すリズムは、彼女の内面の成長とリンクしており、技術的な進歩が精神的な成長と重なる巧妙な演出となっています。
物語の終盤、ローズはフランス国内の大会で優勝し、世界大会への出場を果たします。
ここで描かれるのは単なる勝負の行方だけでなく、ローズが自分のタイピングスキルに自信を持つことで、前向きになる場面です。
映画「タイピスト!」考察まとめ

映画「タイピスト!」は、実話を基にした感動的なストーリーとして、多くの人に支持されている作品です。
本作が特別な存在である理由は、普遍的なテーマを独創的な設定で表現し、視覚的美しさと深い感動を両立させている点です。
2013年セザール賞を5部門ノミネートされていたことが示すように、映画界からも高く評価された完成度の高い作品となっています。
この映画が与える魅力は、自分の可能性を信じる勇気や努力を続ける意味を教えてくれる所にあります。
特に新しい刺激や希望を求める人には、おすすめできる作品です。良かったら、一度観てみましょう。
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