映画『アイ・イン・ザ・スカイ』が提示する究極のトロッコ問題とは?

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今回紹介する作品は、映画「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」です。

本作は、ドローンを使った戦争のリアルを描きつつ、戦場での決断が抱える倫理的ジレンマを鋭く提示した作品です。

あるテロリスト排除作戦をめぐり、「一人の少女の命」と「多くの人々の命」のどちらを優先すべきかという、いわゆるトロッコ問題に直面する様子がリアルに描かれています。

この記事では、映画「アイ・イン・ザ・スカイ」のあらすじや究極のトロッコ問題について考察していきます。

『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』予告編

映画「アイ・イン・ザ・スカイ」のあらすじ

物語の舞台はケニアの首都ナイロビ。

イギリス軍のキャサリン・パウエル大佐は、長年追い続けてきたテロリストグループの幹部が、ある隠れ家に潜伏していることを突き止める。

アメリカ軍のドローンを使った監視の結果、標的のテロリストたちは自爆ベストを装着しており、テロを実行する直前であることが判明。

作戦は「拘束」から「即時攻撃」へと変更され、遠隔操作のドローンミサイルで彼らを排除する決断が下される。

しかし、その建物の近くで、一人の少女アリアがパンを売っていることが発覚。

攻撃を実行すれば、彼女が巻き添えになる可能性が極めて高い。

攻撃の決定権を持つ各国の政府関係者は、「少女の犠牲」と「テロの脅威」の間で揺れ動き、決断を先延ばしにする。

一方で時間が経つにつれ、テロの脅威は増し、決断の猶予はなくなっていく。

果たして、彼らはどのような決断を下すのか? そして、その決断がもたらすものとは?

映画「アイ・イン・ザ・スカイ」の概要と主なキャスト

映画「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」は、2015年にイギリスで制作された作品です。上映時間は102分で、ジャンルは社会派サスペンスです。

主なキャストとして、以下が挙げられています。

  • ヘレン・ミレン(キャサリン・パウエル役)…イギリス軍の作戦指揮官。冷静沈着ながらも、少女の存在に葛藤する。
  • アーロン・ポール(スティーブ・ワッツ役)…アメリカ軍のパイロット。命令に従うべきか、少女の命を守るべきかで苦悩する。
  • アラン・リックマン(フランク・ベンソン役)…イギリス政府の軍高官。政治的決定を下す立場にあり、最終的な判断を迫られる。
  • バーカッド・アブディ(ジャマ・ハラ役)…ケニアの諜報員。地上で小型ドローンを使って情報を収集しながらも、危険な状況に直面する。

ちなみに本作は、アラン・リックマンさんの遺作でもあります。

映画「アイ・イン・ザ・スカイ」が投げかけるトロッコ問題を考察

ここからは、映画「アイ・イン・ザ・スカイ」が投げかけるトロッコ問題についての考察をしていきます。

あなたなら、どのような選択をするでしょうか?

1.トロッコ問題とは?

「トロッコ問題」とは、倫理学における有名な思考実験です。

暴走するトロッコの進行方向には5人の作業員がいる。

しかし、レバーを引けばトロッコは別の線路に進み、そこには1人の作業員がいる。

あなたはレバーを引くべきか?

これは、「少数を犠牲にして多数を救うべきか?」という倫理的ジレンマを提示する問題です。

トロッコ問題については、こちらの本が参考になるでしょう。

2.映画「アイ・イン・ザ・スカイ」におけるトロッコ問題の適用

映画「アイ・イン・ザ・スカイ」では、この倫理的ジレンマがリアルに描かれています。

攻撃を実行するか、中止するかのトロッコ問題が発生しているからです。

  • 攻撃を実行する → テロリストは排除されるが、少女が犠牲になる。
  • 攻撃を中止する → 少女の命は救われるが、テロが決行され、無数の罪のない人々が犠牲になる可能性がある。

上記で、以下の2つの倫理的視点が対立します。

  • 功利主義:「1人を犠牲にしてでも、多くの命を救うべき」
  • 義務論:「たとえ多数を救うためでも、無実の少女を殺してはならない」

この問題に対し、映画の登場人物は、それぞれ異なる見解を持っており、激しく議論を交わします。

映画「アイ・イン・ザ・スカイ」を観たネタバレ感想

映画「アイ・イン・ザ・スカイ」の最大の魅力は、戦場における意思決定のリアルさが挙げられます。

本作のキャストによる葛藤は、胸に迫るものがあります。

例えば

  • ヘレン・ミレンの演技…指揮官としての冷徹さを持ちながらの内なる葛藤
  • アーロン・ポールの演技…指令に素直に従って、ミサイルを撃つべきか否かの葛藤

さらにラストシーンの衝撃は、観る者に「あなたならどうするか?」という課題を強く投げかけてきます。

結局攻撃は実行され、テロリストは排除されますが、少女アリアも重傷を負い、亡くなってしまいます。

この結末が示すものは、「戦争において、正しい選択を取ることは困難である」という受け入れがたい現実です。

個人的には、なぜ危険な地域で少女がパンを売っていたのか、両親は被害のリスクを考えていなかったのかが疑問でした。

映画「アイ・イン・ザ・スカイ」考察まとめ

映画「アイ・イン・ザ・スカイ」は、単なる戦争映画ではなく、戦争における「選択の重さ」や「倫理的ジレンマ」、「意思決定の責任」を鋭く描いた作品です。

多数の人々を救うためには、一人の少女を犠牲にせざるを得ないというのは残酷です。

ただ戦場では、このような理不尽(トロッコ問題)も起こりえるというのが、実態としてあります。

本作は「正しい決断とは何か?」を観客にも問いかけてくる、そんな良作となっています。

物事の意思決定について関心があるという方は、是非ご覧になってください。

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