今回紹介する作品は、映画「あんのこと」です。
本作は、2020年に日本で実際に起きた事件をモチーフにしています。
母親の虐待により、売春や覚せい剤に手を染めていた21歳の杏。
彼女は、ある刑事の出会いによって更生への道筋を示してもらいます。ただコロナ禍の影響で職を失い、彼女は再び闇に落ちていきます。
この記事では、映画「あんのこと」のあらすじやネタバレ考察をしていきます。
映画「あんのこと」のあらすじ
21歳の杏は、幼い頃から母親の春海から暴力を振るわれ、十代半ばから売春を強いられ、過酷な人生を送ってきた。
ある日、覚醒剤使用容疑で取り調べを受けた彼女は、多々羅という変わった刑事と出会う。
大人を信用したことのない杏だったが、なんの見返りも求めず就職を支援し、ありのままを受け入れてくれる多々羅に、次第に心を開いていく。
週刊誌記者の桐野は、「多々羅が薬物更生者の自助グループを私物化し、参加者の女性に関係を強いている」というリークを得て、慎重に取材を進めていた。
ちょうどその頃、新型コロナウイルスが出現。
杏がやっと手にした居場所や人とのつながりは、あっという間に失われてしまう。
行く手を閉ざされ、孤立して苦しむ杏。そんなある朝、身を寄せていたシェルターの隣人、早見から思いがけない頼みごとをされる…。
映画「あんのこと」の概要と主なキャスト
映画「あんのこと」は、2024年に日本で公開された作品で、上映時間は113分。ジャンルは社会派ドラマとなっています。
主なキャストとして、以下が挙げられています。
- 香川杏(演:河合優実)…機能不全家族で育ち、母親から日常的に虐待を受けている少女。売春も強要され、売春相手からドラッグを勧められて薬物依存症になる。
- 多々羅保(演:佐藤二郎)…人情味あふれる型破りな刑事。杏を救おうと、自らが主宰する薬物更生者の自助グループ「サルベージ赤羽」へ誘う。
- 桐野達樹(演:稲垣吾郎)…更生施設を取材する週刊誌記者。多々羅とは数年にわたり親交があるが、彼の裏の顔を暴こうとする正義感と友情に揺れる。
- 香川春海(演:河合青葉)…杏の母親。情緒不安定で酒と男にだらしない。杏に暴力を振るう一方、金銭面で頼り切っており「ママ」と呼んでいる。
- 香川恵美子(演:広岡由里子)…杏の祖母で春海の母親。足が悪いため、寝たきりのような生活をしている。杏に対しては優しい。
- 三隅紗良(演:早見あかり)…杏が住むシェルターの隣人のシングルマザー。
本作は、主役の河合優実さんの圧倒的な演技力が際立ちます。彼女の表情やしぐさが、キャラクターの苦しみや希望をリアルに表現しています。
脇を固めるキャストも実力派ぞろいで、佐藤二郎さんによる圧巻の演技、稲垣吾郎さんの自然体な演技も物語に深みを与えていました。
映画「あんのこと」ネタバレ考察
ここからは、映画「あんのこと」のネタバレ考察をしていきます。「まだ観てない」という方は、ご注意ください。
①杏が選んだ道とその理由
杏は多々羅のおかげもあってか、ドラッグをやめて更生への道を辿ります。
例えば
- 多々羅の主催する自助グループに通う
- 桐野の紹介で介護の仕事に就く
- 夜間中学では勉強にも励む
しかし2020年の新型コロナウイルスの影響により、非正規雇用である杏は仕事を失い、夜間中学も休校となります。
これを機に、杏はようやく手に入れた居場所を失います。
②ラストに杏が選んだ選択
さらに桐野が、多々羅が更生者の女性に対しての性加害の事実を暴き、それを雑誌で報じます。
多々羅が逮捕されたことで、杏はさらに希望を失い、孤独と不安に陥ります。
物語の終盤、杏はある選択をしますが、それは「希望」なのか「絶望」なのか、観る者によって解釈が分かれそうなラストです。
この場面では、社会の残酷さと人間の本質が色濃く描かれていると感じます。
映画「あんのこと」を観た感想(ネタバレ)
本作を観た後、言葉を失う人も多いでしょう。
それほどまでに、杏の人生は過酷であり、現実は冷たく厳しいものでした。
劣悪な家庭環境から一時は抜け出せて更生したものの、新型コロナウイルスの流行で、彼女はふたたび不幸の一途をたどります。
母親の春海からはお金を無心され、機嫌が悪いと暴力を振るわれる…。
このように本作は、気軽に観られる娯楽作品ではありません。
映画「あんのこと」レビューまとめ
映画「あんのこと」は、現代社会の闇と人間の本質をリアルに描いた問題作です。
本作をおすすめする人として
一方おすすめしない人として
決して軽い気持ちで観られる作品ではありませんが、その分、心に深く刻まれる作品です。
是非一度、鑑賞してみてください。
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